NaGISAカンタービレ

ピアノの練習記録とクラシック音楽の話題
<< 調律近づく | TOP | Heilig ist der Herr! >>

「悲愴」ものがたり・9

2008.07.19 Saturday 23:45 | 日記

続きです。

さて、仕事を終えた私は、駐車場に止めてある車へと向かいました。鍵はりえちゃん(仮称)に渡していましたから、何も持たずに。

彼女は、助手席でじっと待っていました。運転席側のドアを開け、私が乗り込んで「お待たせ」と言うと、「待った。遅いよ」。薄い笑顔で、彼女はそう言いました。そして、「書くものある?」と言い、私からボールペンを受け取ると、私の掌に携帯電話の番号を書き記しました。いたずらっぽい笑顔で。
さて、「どこでもいいの?」「うん」。それだけのやり取りで、私はある公園を目指しました。公園とは言っても、まあ言ってみれば「自然広場」とでも言いますか、そんなところです。

運転していたのは30分くらいでしょうか。公園に着き、車を止めました。今でもそうですが、猫の多い公園でした。彼女は嬉しそうに身を伸ばし、自由にならない手で私を招きました。

「ねえ先生、猫好き?」

今行っても猫が多いところです。私は手近にいた猫を抱き上げ頷きました。今でも猫は大好きです。私は、黒猫を抱き上げ、ごろごろと喉をなで、戯れた後に彼女に差し出しました。

彼女は嬉しそうに黒猫を抱き上げました。そして、言ったのです。

「あのね……」

私は、何も言わずに頷きました。

「怖いの」

何が? とはききませんでした。何が怖いかなんて、決まってます。

「なんで、また手術しないといけないの? 私が、何をしたの?」

私は、答える事が出来ませんでした。ただ、彼女に両手を差し出しただけでした。黒猫は、彼女の腕の中から、私の腕の中へ移ってきました。

「お見舞いに行くよ」

言って、私は黒猫の頭をなでました。「にゃーん」と、無邪気に鳴きました。そして私は続けました。

「退院したら、一緒に遊びに行こうよ。どこでも、行きたいところに連れてってあげるから」
「本当に?」
「私は嘘はつかない」

 彼女は私の腕の中の黒猫の頭をなでました。再び「にゃーん」と無邪気な声をあげました。

「約束だよ」
「うん。お金がかかりすぎないところにしてくれたらありがたい」
 彼女はけたけた笑いました。「手術受けるくらいの元気は出たよ」、と。

「帰ろっか」
「うん。約束、忘れないでね」
「もちろん」

りえちゃんは、さっきよりは、ずっと元気になっていました。私は、きっと彼女が苦難に立ち向かえる事を、その時確信したのでした。

「でした」「ました」だらけの文章に自己嫌悪に陥りつつ、いつか続くかも知れないに、今回で終了かも知れない(笑)。
author : NaGISA | comments (3) | trackbacks (0)

Comments

ちゃれ | 2008/07/20 01:43 AM
悲愴物語、どきどきしながら読みました。
普通は数字の若い方から読むのに、後から順に読んでいきました笑
1章づつ纏まってるから、何処から読んでも面白いですね

つづき 書いてね。
岩崎 高宗 | 2008/07/20 01:46 PM
皆様、こんにちは。

段々、小説風になってきましたね。まとめて出版したら、面白いかも? 昨日の話の続きですが…そうですね、告白できたらいいですね。ただ、私ですけど、ストレスで眉が白斑症になってしまって、容姿に大きなキズがあるので…。余程内面を理解してもらわないとダメでしょうね。それ以前に、内面を磨く努力をしないと…

どうぞ、よろしくお願いいたします。
NaGISA | 2008/07/21 01:28 AM
>>ちゃれさん
そろそろ書く気がなくなってますので、ご安心ください(笑)。

>>岩崎さん
>まとめて出版したら、面白いかも?
そんな予定は絶対ありませんので、ご安心ください(笑)。

Comment Form









 

Trackbacks

Trackback URL :